例話発酵組|第1話:腐敗飯の昼休み

この物語はフィクションである。
登場する人物・団体・職場・カップ麺は、すべて空想上の存在であり、現実とは一切関係がない。
……たぶん。

🍶 腐敗の香り

昼休み。
換気の悪い休憩スペースに、カップ麺の湯気と油のにおいが立ちこめる。
四隅には埃が溜まり、空調の風がそれをふわりと舞い上げる。

テーブルに並ぶのは——
おにぎり、春雨スープ、カップ麺、菓子パン、野菜ジュース、オレンジジュース。
まるで炭水化物フェス。

主任は、黙々とおにぎりを食べながら、春雨スープがふやけるのを待っている。
その横顔はまるで修行僧のようだ。

📱 スマホと糖質の昼下がり

周囲を見渡すと、みんなスマホに夢中。
手は動かさず、指先だけがスクロールする。
テーブルの上には水とスマホ。視線は液晶。
きっと、新しいゴルフクラブでも眺めているのだろう。

噛む音と通知音だけが響く。
誰も会話をしない。
この沈黙が、職場の“平和”を保っている。

😴 腹が満ちたら、魂も停止

食べ終えた主任は、椅子をギシリと鳴らしながら首を90度に折り、そのまま眠りに入る。
眠りというより、意識のシャットダウン。
昼食とは、彼にとって再起動の儀式らしい。

🧠 発酵の余韻

「とにかく腹がいっぱいになればいい」
そう言い切る主任の言葉は、どこかこの国の働き方に似ている。
栄養よりも効率。
会話よりも沈黙。
健康よりも習慣。

——でも、俺は知っている。
この腐敗飯の中にも、発酵の余地はあることを。
ほんの少し、スープにブロッコリーを浮かべるだけでいい。
それが“発酵の始まり”になるのだから。

🧩 組長メモ

腐敗と発酵の違いは、ただ「意識があるかないか」だけだ。
今日もこの国のどこかで、カップ麺の湯気が、少しだけ旨味に変わっているかもしれない。

——例話発酵組 第1話
「腐敗飯の昼休み」完。

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